2014年7月7日月曜日

茨城の上申書事件とNシステムの事後検索機能

不定期連載・Nシステムに関する諸事情


茨城の上申書事件とNシステムの事後検索機能



Nシステムの表向きの使途は、公道上に設置したカメラで当該地点を通行する全車両を撮影しナンバープレートを読み取り、予め当システムに登録されている、犯罪に関与している車両や盗難車のデータと照合して発見することとされています。

それに加え、その存在の適法性・合憲性に大きくかかわる部分のため警察が隠しておきたい、主権者にあまり意識して欲しくないと考えているであろう運用上の一面として、事後検索機能があります。

当ブログでも既に述べましたように、所謂大手マスメディアを公権力が懐柔する手段の一つとしての記者クラブ制度があり、ここでのプレスリリースが、大手マスメディアが報じる事件モノの主要ソースであり、また記者クラブ加盟社所属の記者らによる警察幹部への深夜早朝の取材の際のリークを、大手マスメディアは記事の中で、「○○は●●であることが、xx日、警察への取材で分かりました」等と伝えます。そんなリークネタの記事として、Nシステムの使途の一面である事後検索で判明した事実をマスメディアが伝えたことがあったのです。

それが茨城の「上申書事件」の一部、“日立市ウォッカ事件”に関するリークです。


これは2007年の元旦に報じられたものです。

茨城の上申書事件、Nシステム2か所に車通行記録(読売新聞)
http://news.a902.net/a1/2007/0101-23.html


内容としては6年4ヶ月前の車両の記録がNシステムに残されていて、事後検索機能で以って犯罪の告白を裏付ける内容のデータが得られたというものです。

このような報道に接するにあたってまず注意しなければならないのは、これはNシステムの機能で判明した事柄に関してリークすることで、当システムの運用や存在自体が有用なものであり許容されうるというような雰囲気を醸成するためのものだとも考えられますから、乗せられない様にしたほうが良いと言うことです。そうしなければとても大切なものを社会が失うことになります。

もっと言えば、この「上申書」にて発覚した事件の内容自体は陰惨なものではありますが、その印象に引き摺られて「元暴力団幹部らは所謂“極悪人”の類であって、このような者が存在するのだからNシステムのようなものは必要である」という風に容易に誘導されてしまいます。

しかしそれはそれ、これはこれなのでありまして、Nシステムが蓄積しているデータの殆どのものは犯罪とは無関係のものです。その存在自体極めて稀な、この事件の犯人のような人物の犯罪の告白がたまたまNシステムによって裏付けられたからといって、違法な手段で収集した、犯罪に関与していない他の車両のデータまで蓄積して漏洩の危険に曝しているNシステムの運用を正当化出来るものではありません。

なにより当時ノーマークだった人間が使っていた車両、Nシステムには全通行車両の情報が蓄積されている訳ですが、そのデータが6年4ヶ月以上も残されていて容易に電算機にて検索出来る事実の方が問題なのです。もし捜査対象者の記録を採るのなら、事前に裁判所の許可を取って、法に則って情報を収集する必要があるのです。まあもっとも判例の積み上げでこの辺りも警察に徐々に切り崩されて来てはいるのですが。

警察は自前のインフラであるNシステムを外部からの監査もほとんど無しに好き勝手に整備し運用しています。検察官ですらNシステムの実態に関してはあまり把握していないといいます。何度も言っていますが改めて述べますと、公道上に設置した装置で全通行車両の前部あるいは後部(もしくは両方)と運転席・助手席の人員に赤外線を照射しビデオカメラで撮影、そして読み取ったナンバープレートに場所・時刻・進行方向の情報を加えて中央装置に送信して情報を蓄積し、電算機にて事後的に検索可能な状態にしています。保存期間に関してはおそらくは永久保存、とにかく具体的な嫌疑が無くとも無差別に撮影され、長期間に渡って情報が蓄積され、消去されないのです。

前述の様に、当時ノーマークだった対象に関する情報がNシステムにはしっかり記録されていて6年4ヶ月程度前のものでも検索可能という事実を“広報”するのは、警察的にはリスキーではあったのでしょうが、この“日立市ウォッカ事件”のようなケースに絡めて流せば、印象を操作することで感情的な反応を惹起せしめ、自分たちに都合のよい状況に持っていくことが出来るだろうとの読みがあったのか。

もしくは全国紙新聞社が元旦のスクープ記事としてのネタを仕入れている最中にこの話が警察幹部との歓談や取材行為の中で出た結果、紙面やネット配信に流れたものなのか。

つまりリークなのかメディアのプチ暴走なのかは知りませんが、それも彼らの性(習性)のようなもので、主権者側は彼らの流す情報にもっと意識的に接するようにすればよいのです。

実際のところ官憲が暴走し、政治家は官憲の暴走ぶりをチェック出来ず、予算はほぼ要求額通りに付けてやるような建前上だけの立憲民主主義社会となっている今日では、一人でも多くの主権者が彼らの所業を把握し、連中に乗せられたり使われたりしないよう意識的に生きる必要があります。


さて、折角ですので記事に出てくるN端末を特定しておきましょうか。

|調べによると、常磐道上り線の日立北インターチェンジ(IC)―水戸IC間に設置されたNシステム

常磐道 95.2kp
那珂市(那珂郡那珂町)菅谷176-3
https://maps.google.co.jp/maps?q=36.46145,140.48731

北沢署流出リスト 274行目
予算年度:H5-3
稼動開始日:1995/1/4
財源:国費

|が8月13日未明、後藤被告らが分乗していた車のナンバーを記録していた。さらに同日早朝、水戸市内の国道50号のNシステム

国50
水戸市大塚町1445-3
https://maps.google.co.jp/maps?q=36.38608,140.39234

北沢署流出リスト 288行目
予算年度:H7-2
稼動開始日:1996/4/1
財源:国費

|も後藤被告らの車のナンバーをとらえていた。いずれも日立市から水戸市を経て七会村に向かう途中の地点だった。

・・・

尚、現在では常磐道の日立北IC―水戸IC間には下記N端末が増設されていますが、“日立市ウォッカ事件”発生当時には存在していませんでした。
この分は例の2009年度補正予算による増設と見られます。

常磐道
日立市田尻町
https://maps.google.co.jp/maps?q=36.62884,140.65590



2014年7月4日金曜日

役所が役所にツッコミ


ナンバー読み取りのNシステム、全国に1791台あることが判明
IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議
http://irorio.jp/agatasei/20140703/146688/

財務省 予算執行調査資料 総括調査票「自動車ナンバー自動読取装置の整備(PDF)」
http://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2014/sy2607/02.pdf