2014年6月30日月曜日

Nシステムの弱点

2015-08-22 当該地区マップ画像およびリンクを追加し内容を整理


不定期連載・Nシステムに関する諸事情

Nシステムの弱点


2013年11月に起きた田園調布の女子中学生誘拐事件がスピード解決したのはNシステムの手柄であるというリークを一部メディアが伝え、巷では「Nシステムの勝利!」というような反応が多かった様ですが、これはあくまでも記者クラブ加盟社向けのリークという姑息な手段で“広報”されたものであり不当であります。それ以前に当システムを運用するにあたっての前提となる法的根拠や合法性、正当性を欠いていますから。

また行政事業レビューシートhttp://www.npa.go.jp/yosan/kaikei/yosankanshi_kourituka/24review/23kohyo/23_37sheet.pdf
の中(6ページ目)では、Nシステムの実態についてきちんと説明していません。単に手配車両と照合するだけではなく、読み取った全車両のナンバーを場所・時刻・進行方向と括り付けた上で長期間蓄積し、事後検索が可能なものだという説明を省いています。

そんな実態を隠して運用されているNシステムですが、この田園調布誘拐犯Nヒット事件、純粋にNシステムの手柄だと喜んで良いようなものなのでしょうか。今回はこの点に関して考察します。

・・・

さて、犯人は埼玉県在住で運送会社勤務とのことでしたが、まず運送会社の従業員でNシステムを知らないというのは考えにくいと思われます。というのは社有車でオービスを作動させたというようなトラブルもあるでしょうし、そうであればNシステムについても意識しているはずです。また警察は交通事故の目撃者探しにNシステムを活用しているという話を目耳にするからです。

例えばこれは全国紙新聞の地方版読者投稿欄にあった記事なのですが、そのまま転載は出来ませんので概略をリライトすると以下のような話です。ちなみに2009年9月の投稿です。

・・・秋の彼岸に親類の墓参りを思い立ち鹿児島県某所から熊本県八代まで高速道路を走行した。その最中疾走するパトカーとすれ違った。墓参りとほかの用事で2時間ほど八代にいてその後鹿児島に戻った。翌朝新聞を見ると、高速道の事故で2名死亡し2時間通行止めになったという。更に驚いたのが熊本県警から電話が掛かってきたことで、県警によればその事故は投稿者が事故現場を通過した直後に起きていたという。熊本県警はNシステムで通過車両を調べ、何か事故について知っていることは無いかと聞いてきたのだった・・・

多数の車両を運行させている運送会社にはこのように、何か見てないですか?というような問い合わせが入っているかもしれません。

また犯人は盗難に遭ったナンバープレートを犯行時に使用したレンタカーに装着していたといいます。これは無論レンタカーの借主である自身(犯人)が割り出されないために企図したものでしょうし、おそらくはNシステム対策のつもりでもあったのでしょう。よって犯人がNシステムの存在自体を知らないというのは考えにくいと言えます。

ただ、このナンバープレートは盗難に遭ってから数ヶ月が経過していたそうで、犯行時までにNシステムに登録されていたのです。これが決定的な犯人サイドのミスで、Nヒットによる緊急配備が敷かれることとなり早々にお縄となったという次第です。

これは犯人がおそらくはNシステムの存在を意識していたにも拘らず、基本的な運用スタイルについてあまり良く理解していなかったのではないかと思わせるところです。東京23区内で、盗んだナンバープレートを付けて走行したらどうなるか位、誰でも想像出来るでしょう。また闇サイトを通じて募りわざわざ沖縄から上京させた共犯者2名のうち1名は途中で車を降りたといいます。明らかに身代金目的の誘拐を遂行出来そうにないと判断したのでしょう。

当該地区のNシステムマップ(2015年)
こげ茶色のアイコン(○と◆)は事件後増設されたもので
2013年11月当時には存在していなかったが
それでも世田谷、狛江、調布と次々にNヒットしたものと思われる。

MyMapsにて閲覧するにはこのリンクをクリック


であれば、今回の“Nシステムの手柄”については犯人の程度が低すぎたことを割り引いて考える必要があるということです。もし犯人が闇市場で取引されているであろう偽造ナンバープレートを装着していたらNシステムは反応しないでしょうからスピード検挙とはならなかった訳です。反対に言えば、Nシステムはこんな間抜けな犯人にしか効力を発揮しないということなのです。

ここに監視カメラやNシステムに依存することの恐ろしさがあります。初動が悪く、さらに監視カメラの記録を調べても手がかりがなかったり、(偽造ナンバープレートを読まされた)Nシステムのデータがあてにならないのなら捜査が難航するという事ですから。

またナンバープレートに細工する等という行為、少なからず行われていると考えられます。一例を挙げましょうか。こちらも(元は記者クラブ加盟社向けプレスリリースだと思いますが)そのまま転載出来ませんのでリライト致します。

・・・2011年8月2日時事通信 - 女性との不倫関係を隠すため自家用車のナンバープレートを変造したとして、山形県警が40代の巡査部長を道路運送車両法違反容疑で書類送検し、減給の懲戒処分としていたとのことでしたが、これまで書類送検と処分を公表していませんでした。県警監察課によれば、巡査部長は不倫相手の女性と会っていることが職場や家族に知られないようナンバープレートの数字の一部に白いテープを貼る手段でナンバープレートを変造していたといい、発覚したきっかけは駐車場にナンバーが変造された車が止まっているのを一般の人が見つけて通報したことからだといいます。県警は書類送検と処分を公表していなかった理由として「業務上ではなく、私的な行為上のことなので、処分の発表を停職以上としている警察庁の指針に従った」とのことです。・・・

Nシステムの運用実態をよく知るPMならではのお手本ですね。警察官はNシステムによって不倫が職場や家族に知られるので対策を講じる必要があるのですね。

そんな訳で、Nシステムは偽造・変造ナンバープレートに弱そうです。小賢しい人には歯が立たず、ちょっと間が抜けた人にしか役に立たないのですから、巨額の費用を投じ、法による支配をないがしろにしてまで運用するのが妥当だとはとても思えない代物ですね。



2014年6月15日日曜日

警察がNシステムに拘る訳

不定期連載・Nシステムに関する諸事情

警察がNシステムに拘る訳


過去稿でも述べましたようにNシステムの運用は莫大なコストがかかる割には、表に出すことの出来る成果が著しく少ないものです。

その数少ない、大手柄と巷では考えられている成果の一つが割と最近の事例ですが田園調布の誘拐事件でした。

といってもNヒットがきっかけでスピード検挙に至ったという事実はおおっぴらには明かせないものだった様です。

株式会社日本事故情報調査機構さんによる田園調布誘拐事件の報道に関する記事
http://jikochosa.co.jp/blog/?p=924

リンク先にあるように、各社報道内容が違います。

S新聞ではNヒットしたため検問を実施して検挙に至ったという内容に対し、東北のブロック紙ではNシステムについて触れられていないといった具合にです。

S新聞は言うまでもなく当局寄り記事でしょうから警察のリークを元に報じており、東北のブロック紙は警察のプレスリリースがソースなのか東京支社で収集した情報がソースなのか、共同や時事の配信がソースなのか知りませんが、とにかく(何らかの判断で?)Nシステムについては伏せた報道内容となっています。

記者クラブ加盟社はプレスリリースの提供を中心にいろいろと便宜供与を受けていますし、夜回り朝駆けと呼ばれるスタイルの取材で警察幹部から聞き出した情報、また意図的なリークの場合もあるでしょうがそれらをソースに報じるのは一般的です。

また記者クラブ加盟社はあからさまに警察の広報であるかのような内容の放送を流すことがあります。例えば一例を挙げますと、某地上波キー局の夕方のワイドショー的報道番組において(改編前ですが)未解決事件に関して基本情報に加え、新たに明かされた情報を紹介し警察への情報提供を呼びかけるコーナーがあり、その中で行方をくらました被疑者に関し、Nシステムの事後検索結果で犯行後の足取りがある程度判明しているという内容の情報を流すといった様なものです。密着警察24時間みたいなタイトルのものも勿論そうです。これらのようなケースは明らかに御用番組(コーナー)とみられます。

ついこの間警察は秘密保持の徹底を組織内に指示したばかりだったのですが。被疑者に対してはNシステムで得たデータを突き付けないようにするけれど、マスメディア向けのリークには使うのかもしれません。

・・・

Nシステムの存在、そして現在の運用形態は限りなく黒に近いグレーゾーンにあり違法である可能性が高く、何度も言いますが正々堂々と運用の成果を発表できないような代物ではあります。

しかし将来において何らかの形で追い詰められた結果、ある日突然警察庁の役人が謝罪会見をしてその違法性を認め、運用停止・撤去を発表したりする可能性が・・・・・あるかというと、それはあまり期待できません。

では何故期待出来ないのでしょうか。やっぱりミドルエイジズなんでしょうか。そして標題の「警察がNシステムに拘る訳」とは。

理由1. まずお役人というのは保身が第一です。そして自分たちの無謬性が絶対的前提となっています。ですから自らの行為の違法性は(際どいことをやっていても)絶対に認めません。そしてなんといってもメンツに拘ります。ですから一度始めた事を中止したり出来ません。そしてN端末の増設も過剰なまでに次々と行われます。

理由2. 一般に役所で重視されるのは先例主義です。前例があれば悪事でも何でもやり易く、善い事であっても前例がなければ非常に困難になります。Nシステムに関して言うと違憲とはいえないという様な判例がありまして、Nシステムの整備を企画した当事者らや現行の責任者ら、そして幹部らは今や枕を高くして眠れることと拝察し、お慶び申し上げる次第であります。もちろん皮肉です。これは何の事件による判決かといいますと行政の違法行為を認めさせる目的で国賠訴訟を起こした勢力がありまして、その訴訟が敗訴した際に出来たものです。当ブログ主は原告でないので本件については責任がありませんし、この判例を目の上のたんこぶのように感じる一人であります。しかし上しか見ないサラリーマン裁判官に“画期的判決”など書けるはずも無いとは思います。

理由3. 今や携帯電話やスマートフォンを追えば特定の被疑者やターゲットを捕捉するのは容易でコストもあまり掛かりません。電気通信事業者には天下りを送り込むなどしているそうですから割とフリーに情報にアクセス出来るはずです。裁判所の令状まで用意しなくても捜査関連事項照会書にて電気通信事業者は各種照会や逆探、携帯電話の位置検索に応じている実態が分かる文書が過去に愛媛県警PMの私有PCからWinnyネットワーク上に流出しています。それでもNシステムという自前のインフラに拘るのは、全ての車両が潜在的に犯罪に関与しているという想定になっているからです。その為ヒットしなかった車両の情報についても消去せず蓄積し長期間保管されるのです。そして自前のインフラであればどの様に使われているものか、実態を隠蔽するのが容易だからです。

以上にみてきた様に、三権分立だの立憲主義だのと教わったのは多分建前上だけの話で実態は違うのです。ですから自らの尊厳を取り戻す為に当ブログでは回避行動を推奨しております。それには端末(ナンバー読取機)のリストアップが必要であり、せっせと続けるまでのことです。